立岩隧道01
奥利根・藤原湖畔 立岩トンネル

隧道が写った戦後絵葉書を入手したのでタイトル名を参考にググってみると、群馬県道63号線(片品水上線)の立岩隧道(群馬県利根郡みなかみ町)であり、新立岩トンネルの開通によって30年以上も前に旧道化している事が判明しました。


立岩隧道02
立岩隧道周辺地図

また、全国隧道リストによりますと立岩隧道が所属している一般県道・湯の小屋大穴線(県道63号線の前身)には、立岩隧道と同年に竣工した武尊隧道(昭和31年竣工、延長250.5m、幅員4.0m、高さ4.3m)も並記されています。この武尊隧道も立岩隧道と同じく藤原ダムによって水没した旧道の付替え県道の一部ですが、こちらは昭和60(1985)年に拡幅改修を受け、名称も武尊トンネルに改称しています。


立岩隧道03
【A地点】 水上側旧道分岐

それでは立岩隧道の現状確認と参りましょう。水上側からだと県道63号線が藤原ダムの天端で利根川を渡ると間も無く新旧・立岩トンネルの分岐点となります。新道に架かっている橋は大倉沢橋、昭和53(1978)年8月の竣工です。立岩隧道は昭和31(1956)年の竣工なので、開通から20年程度で旧道落ちした計算です。


立岩隧道04
【B地点】 旧道のスノーシェッド

旧道もヘアピンカーブの先端部で大倉沢を渡ると、二車線幅が確保されたスノーシェッドが登場。このシェッドは立岩隧道まで延々と続いており、全体で250mほどの長さがありました。


立岩隧道05
【C地点】 シェッドの支柱に取り付けられている看板
「トンネル内 先入車優先



立岩隧道06
立岩隧道 水上側坑口

シェッド内も含めて二車線幅だった水上側の旧道は、立岩隧道内に入ると唐突に一車線幅まで狭まりました。先ほど「先入車優先」との告知があったものの内部が屈曲している為、全長100m未満の隧道と言えども先入車の確認は容易ではありません。絵葉書にも写ってますが、湯の小屋温泉行きの路線バスは新道が開通する以前は当然ながら旧隧道を通っていた訳で、運転手にとってはさぞかし神経をすり減らす難所であったに違いなく、これらの事情が当隧道を20年程度の短命に終わらせた原因であるのでしょう。
ここまでの旧道には通行止の告知も物理的なゲートも無かったので、洞内にも車で入ろうと思えば入れる状態でしたが、小崩落が目立つ洞内では不測の事態が起こらないとも限らないので大事を取って徒歩にて入洞する事にしときましょう。

【立岩隧道】
昭和31(1956)年竣工
延長74.0m、幅員4.0m、高さ4.3m
昭和53(1978)年廃止


立岩隧道07
水上側の扁額



立岩隧道08
洞内の横穴

山肌に沿って穿たれた全長74mの隧道のちょうど中間に位置する屈曲部分は、地被りが余ほど薄いらしく藤原ダムによって生じた素掘りの横穴が開いていて藤原ダムと藤原湖を見渡す事ができました。


立岩隧道09
藤原ダム

利根川上流部に位置する藤原ダムの計画は電源開発等によって戦前から存在していましたが、実現に向けた動きが一気に進んだのは昭和22(1947)年に発生したカスリーン台風によって生じた大規模な洪水被害からでした。昭和26(1951)年に利根川治水の一環として洪水調節及び利水、発電を目的とした藤原ダムが着工。以来8年の歳月を経て昭和34(1959)年に竣工しています。これによって藤原集落159戸と旧県道が犠牲となって水没し、立岩・武尊隧道を擁する付替え県道が生じた訳です。


立岩隧道10
立岩隧道内から片品方面を見る



立岩隧道11
立岩隧道 片品側坑口

片品側の坑口も水上側と同様にスノーシェッドに覆われているので暗く陰鬱な雰囲気です。坑口前には先入車確認の為か「警笛鳴らせ」の標識が立っています。


立岩隧道12
片品側の扁額



立岩隧道13
【D地点】 絵葉書(左)と現状(右)の比較

ここで冒頭の絵葉書と現状を比較したところ、絵葉書の坑門は道路の線形と立岩の切通しの形状から片品側の物と判断して間違いないようです。坑門に接しているスノーシェッドは竣工当時からの物ではなく、後付けの設置だった事も絵葉書との比較で判明しました。


立岩隧道14
【E地点】 シェッド間の明かり区間

片品側の旧道も細かい屈曲が連続しているものの概ね二車線幅が確保されていたので、旧道を短命に終わらせた最大の原因は立岩隧道だったと言えそうです。


立岩隧道15
【F地点】 5月だと言うのに残雪が残っている旧県道
(平成27年5月10日撮影)



立岩隧道16
【F地点】 旧道上に生えていたふきのとう

旧道の路面に堆積した土の上はふきのとうの格好の生息地になっていました。寒冷地とは言え暖かくなってきた5月なので、やや開き過ぎな感じではありましたが、天ぷらにすると思いのほか美味しく頂けました。


立岩隧道17
【G地点】 新立岩トンネル片品側坑口

新トンネルの片品側坑口前で横切っているのが旧道。新道600mに対し、旧道は立岩隧道を含めて約1.4kmの行程でした。

【新立岩トンネル】
昭和53(1978)年竣工、延長519.0m、幅員6.0m


立岩隧道18
立岩隧道周辺地図



立岩隧道19

最後に県道63号線の起点付近に建立されていた「藤原県道開通紀念碑」の碑文を紹介して終わりにしたいと思います。この碑文によると、県道63号線の最初期には「宝川水上停車場線」と言い、昭和9(1934)年7月に宝川(現在の県道264号線・宝川久保線)まで全通したようです。その後の宝川水上停車場線は湯の小屋大穴線を経て、平成5(1993)年に現在の主要地方道・片品水上線に昇格しています。

藤原縣道開通記念碑

本道路寶川水上停車場線ト称シ昭和七年十一月二日縣道ニ編入同年十二月一日起工昭和九年七月竣工ス
本道開通ニ依リ利根川上流冨源ノ開拓本村将来ノ発展ニ稗益スルコト誠ニ大ナリト云フヘシ之ガ開設ニ当時ノ縣知事金澤正雄閣下並ニ関係当局及び地元有志ノ多大ナル尽力ヲ感謝シ併テ本村嚝古ノ事業ヲ子孫ニ傳ヘ永遠ニ記念センカ為有志相謀リ此ノ碑ヲ建設ス
昭和十年十一月



立岩隧道20
幸知橋
(向かって左側に旧橋の橋台が残っている)

県道63号線の起点付近に架かっている幸知橋は平成19(2007)年に開通したばかりの新しい橋です。すぐ上流側には昭和36(1961)年に完成した先代・幸知橋の橋台が残っていました。


スポンサーサイト
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://haisentn.blog41.fc2.com/tb.php/599-8d1d832e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック