
土讃線・吉野川橋梁
【近代土木遺産Cランク】
阿波池田を過ぎた土讃線は佃駅(徳島県三好市井川町)で徳島線と分岐すると吉野川橋梁(昭和4年竣工、L=571m)にて吉野川を渡ります。対岸の駅は真言宗別格本山箸蔵寺の門前駅である箸蔵駅。箸蔵駅と佃駅は直線距離にすると1㎞ほどの距離しかありませんが、猪ノ鼻峠越えに向けて高度を稼ぐため大きな半円の線形を描いており、駅間距離は3.4㎞あります。

阿讃連絡 吉野川鉄橋
吉野川橋梁が開通した当時は上流側は三好橋(国道32号線、昭和2年竣工)、下流側は穴吹橋(国道193号線、昭和3年竣工)まで他に橋が無かったため徒歩で渡る近隣住民が後を絶たず、橋上で列車を避けようとして吉野川に転落する人も多かったそうです。この界隈での吉野川架橋は池田橋、美濃田橋が工事半ばで頓挫するなど遅々として進まず、現在の最寄りの二橋である三好大橋、美濃田大橋が開通するのは昭和30年代になってからでした。

土讃線の阿讃国境越えの計画路線には3つの候補ルートがありました。猪ノ鼻峠、東山峠、曼陀峠です。この内、曼陀峠は西に寄り過ぎている等の理由で早々に候補から外れ、猪ノ鼻峠と東山峠が検討される事となり、一時は東山峠が最有力とされた時期もあったものの、最終的に猪ノ鼻峠が巻き返し現行ルートに決定しています。
まんのう町の塩入駅が実際には同町帆山に位置しているにも関わらず、東山ルート上の塩入を名乗っているのは誘致合戦に敗れた塩入集落に配慮によるものです。

箸蔵駅舎
箸蔵駅は国道32号線から県道162号線(箸蔵停車場線)を113m入った所に位置しています。駅舎が残っていますが無人化は早く、40年以上前の昭和45年に無人駅となりました。

箸蔵駅から吉野川橋梁、佃駅を見る
佃駅の標高は94m、箸蔵駅は139mなので彼我の高低差は45m、平均勾配は13‰です。箸蔵駅からは勾配の厳しさはさらに増して25‰の急勾配が県境の猪ノ鼻トンネルまで続きます。

徳島県奥院箸蔵山大門ヨリ吉野川ヲ望ム
中央の橋が吉野川橋梁

駅構内から佃方面を見る
箸蔵駅は特急列車の行き違いも可能な2面2線(特急停車は無し)。通過列車は本線の2番線を通過し、停車列車は駅舎に面している1番線を概ね利用してます。

箸蔵駅開業日の一番列車
(昭和4年4月28日)

構内跨線橋から佃方面を見る

構内跨線橋から坪尻方面を見る
かつては2番線ホームが島式で2面3線の構内配線になっていました。写真右側の未舗装道が3番線の名残で、現在も所々に枕木が残っています。

レールが残る旧貨物ホーム跡

駅名標
隣の駅は以前紹介した秘境「坪尻駅」です。

開業間もない頃の蔵谷トンネル
(箸蔵~坪尻間)

箸蔵駅と箸蔵停車場線
箸蔵駅の駅前通りである県道162号線は数件の商店が軒を連ねていますが、その殆どがシャッターを固く閉ざしていて、店を閉めてから相当の年月が経過しているように見受けられました。鉄道全盛の頃は箸蔵寺への参拝客で賑わっていたんでしょうな。

箸蔵山ロープウェイ 登山口駅
箸蔵駅から県道162号線→国道32号線を500mほど歩くと箸蔵山ロープウェイの登山口駅に辿り着きます。登山口駅から箸蔵寺傍の山頂駅までの高低差342mを約4分で結ぶ箸蔵寺参拝のメインアクセスです。運賃は大人往復1500円と少し高めですが箸蔵寺へはマトモな車道も通じてないので、参拝したい人には値段分の価値はあるのではないかと思います。

箸蔵登山鉄道 赤鳥居駅
箸蔵山ロープウェイの歴史を遡ると、その起源は戦前のケーブルカーにまで遡ります。
ケーブルカーは箸蔵登山鉄道と言い、土讃線の開通によって飛躍的に利便性が向上した箸蔵寺への運賃収入と更なる集客力の増加を見込んで、昭和5年6月開業に現在のロープウェイ登山口駅の場所にあった赤鳥居駅~仁王門駅間の0.4㎞(高低差約240m)が開業しました。山麓の赤鳥居駅は小田急の片瀬江ノ島駅(神奈川県藤沢市、昭和4年開業)と同様に、龍宮城を模した華やかな駅舎であったと言われています。このケーブルカーは戦時中の不要不急線の指定を受け昭和19年に廃止となり、昭和46年に跡地に沿ってロープウェイが敷設されています。

赤鳥居駅ホームから仁王門駅を見る

深い薮に覆われながらも残っている赤鳥居駅のホーム跡

箸蔵登山鉄道全景
中間に交換所がある2両交走式だった

ロープウェイとケーブルカー跡
ホームの他にも掘り割りや路盤の大部分が現存しているらしいですが、夏場はあまりにも深い藪のため判然としませんでした。今の時期なら見通しも良くなっているはずなので近くを通った人は確認しといて下さい。

登山電車(2号車)

仁王門駅舎
赤鳥居駅、仁王門駅ともに駅舎は廃線後しばらくして取り壊され現存しません。2駅間の所要時間は5分、通常は30分間隔で運行していました。

箸蔵寺全景
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