
平成17(2005)年11月18日に網代バイパスが開通し、旧道となった国道135号線の網代隧道(熱海市網代)。
この隧道はバイパスが開通する4ヶ月前の平成17年7月31日に訪問していたので、廃止から7年経った現在の様子と比較しながら紹介していきます。

【A地点】 新網代トンネル 熱海側坑口
国道135号線は網代旭町の市街地を昭和44(1969)年完成の新網代トンネルでパスしています。名称上は網代隧道の新トンネルに当たる新網代トンネルですが、多くの「新」を冠するトンネルが旧隧道の並列の位置に建設されているのに対し、新網代トンネルと網代隧道は直列の位置に繋がっていました。こういう例は私の知る範囲では和田山トンネル(兵庫県、国道9号線)と浦城トンネル(大分県、国道388号線)があります。
【新網代トンネル】
昭和44(1969)年1月竣工、延長525.0m

【B地点】新網代トンネル 伊東側坑口
(平成17年7月31日撮影)
新網代トンネルの伊東側坑口は市街地を抜けて来た旧国道との丁字路になっていた為、国道の進路はほぼ直角の急カーブを描いており、トンネルによって市街地をバイパスした代償と言う訳ではないでしょうが、国道135号線の難所の一つになっていました。現在はこの丁字路から直進する網代バイパスが開通し、新網代トンネルの開通によって生まれた急カーブを解消しています。

【B地点】から見た開通前の朝日大橋
(平成17年7月31日撮影)
従来の国道は険しい断崖を通っていたので新網代トンネルに接続する新道(網代バイパス)を建設するとすれば海上にルートを求めざるを得ず、網代海岸に張り出す二つの橋梁(朝日大橋と朝日橋)が架けられました。

【B地点】 新網代トンネル 伊東側坑口
(平成17年7月31日撮影)
新網代トンネルの旧道は路線バスが通る生活道路である為、こちら側からも頻繁に車の出入りがあります。トンネル出口(しかも急カーブ)とあって危険な交差点でしたが、網代バイパスの開通により伊東側からは右折レーンが設置され、見通しも幾分良くなったようです。

【B地点】 新網代トンネル 伊東側坑口
(平成19年2月3日撮影)
網代バイパス開通に伴い旧道となった網代隧道を含む区間への入口は柵によって塞がれ、車での出入りは出来なくなっていました。もっとも反対側(【D地点】)は塞がれてないので、通り抜けが出来ないだけで廃道という訳ではありません。

【B地点】 伊東側の新網代トンネル旧道入口

【B地点】から伊東方面の旧道(当時は現道)を見る
(平成17年7月31日撮影)

【B地点】から伊東方面の旧道を見る
(平成24年4月7日撮影)
上の写真から7年後、バイパス開通から6年半が経った旧道の様子。当時は引っ切り無しに車が通過していて狭い路側帯から一歩も出られないほどでしたが、今では通る車は全くと言って良いほど無くなりました。国道標識をはじめとする標識の類は全て撤去済です。

【C地点】 隧道前の道路情報掲示板
(平成17年7月31日撮影)

【C地点】 上の写真とほぼ同位置
(平成24年4月7日撮影)
旧道区間で唯一撤去されずに残ったのが網代隧道の手前に設置されていた道路情報掲示板です。それなりに高価な設備だと思いますが、他の場所に転用される事も無く「試験中」表示のまま無為に残存しているという事は、案外移送コストに見合わない程度の物なんですかね?

立岩トンネルと網代隧道
(平成19年2月3日撮影)

立岩トンネルと網代隧道
(平成24年4月7日撮影)
旧道化後はロクに維持管理もされていないのか、二車線幅を有する路面は徐々に雑草に浸食されつつあり、利用可能な幅員は現時点では一車線分に狭まっています。

網代隧道 熱海側坑口
(平成17年7月31日撮影)
網代隧道は昭和5年11月26日に発生した北伊豆地震よって、それまで海岸沿いを通っていた県道伊東熱海線(現国道135号線)が寸断されてしまった事から震災の復旧事業として建設された物だと言われています。普通車と大型車がすれ違えるだけの断面を有する当時としては大きめの隧道でしたが、車列が絶え間なく駆け抜けるほどに増大した現在の交通量の前にはボトルネックとなり、特に大型バスが頻繁に通行する観光シーズンなどは渋滞多発地点になっていたそうです。また、普通車同士にしても洞内には殆ど余裕が無いので、徒歩での通り抜けるにはかなり勇気が必要です。
【網代隧道】
昭和7(1932)年6月竣工、延長291.5m、幅員5.5m、高さ4.5m(制限高4.0m)

網代隧道 熱海側坑口
(平成24年4月7日撮影)
廃止後も隧道は手を加えられる事もなく、総石積みの美しい坑門は健在です。この隧道には扁額が坑門上部には設置されておらず、代わりに両ピラスターに隧道名と竣工年を記した銘板がそれぞれ埋め込まれているというちょっと変わった特徴を持っています。去年の震災以後は節電の風潮で洞内は消灯されていますが、それまでは現役時代と変わらず照明も点灯していました。

開通前の立岩トンネル
(平成17年7月31日撮影)
開通の4ヶ月前とあって既にバイパスの路面は出来上がっていたので、車に轢かれかねない旧隧道を避けてフライングで立岩トンネルを歩く事にしました。海側には網代隧道開通前の県道が薮に埋もれた廃道となって残っています。
【立岩トンネル】
平成17(2005)年6月竣工、延長284.0m、幅員8.5m、高さ4.7m

【D地点】 伊東側旧道分岐
(平成17年7月31日撮影)

【D地点】 伊東側旧道分岐
(平成19年2月3日撮影)
伊東側のバイパスは山肌に沿ったクランク状の直角カーブから直進する形で朝日橋を架けて立岩トンネルに接続しています。こちら側の旧道は隧道の手前に水産加工場がある関係で多少は車の出入りがあるようです。

網代隧道 伊東側坑口
(平成17年7月31日撮影)
熱海側と変わらぬ造りの伊東側の坑門。こちら側は坑門に道路情報掲示板が取り付けられており、通常時の設定なのか「車間守れ」の四文字が常時点灯していました。ちなみに通りがかりの旅行者のような人が写っていますが、この人も網代隧道を通り抜ける事には躊躇したらしく、暫く立岩トンネルと網代隧道を見比べながら思案した後、供用前の立岩トンネルに向かって行ったのでした。

網代隧道 伊東側坑口
(平成24年4月7日撮影)

ピラスターの銘板

立岩トンネル 伊東側坑口
(平成17年7月31日撮影)
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